2025年11月26日、太平洋の島国マーシャル諸島が世界で初めて、すべての国民を対象としたベーシックインカム(UBI)の支給をスタートした。約33,000人の市民に3ヶ月ごとに約200ドルが届けられる。

「今日、エンラが誕生した。すべてのマーシャル人がその恩恵を受けられるよう設計されたプログラムだ」——支給開始の式典でハイルダ・ハイネ大統領はこう語った。「エンラ」とはマーシャル語で「分かち合い」を意味する言葉で、プログラムの正式名称は「Enra Jen Lale Rara(皆のために分かち合う)」。伝統的な助け合いの精神を、現代の社会制度として実現したものだ。
📊 制度の概要
支給対象:マーシャル諸島に居住するすべての市民(子どもを含む)
支給額:3ヶ月ごとに約200ドル(年間約800ドル)
財源:米国との自由連合協定に基づく13億ドル超の信託基金
受取方法:銀行振込・小切手・デジタルウォレットから選択可能
この制度の財源は、かつて米国が核実験の補償として設立した信託基金だ。マーシャル諸島の議会はその資金の一部を、すべての国民に直接届ける制度として活用することを決定した。年間の総費用は約3,000万ドルで、国民の税負担はゼロ。5人家族であれば、年間1,000ドルの安定した収入が保障される計算になる。
特に注目されているのは、遠隔離島に暮らす市民への対応だ。これまで現金の受け取りには数週間かかることもあったが、ブロックチェーン技術を活用したデジタルウォレットによって、どんな離島でも数秒で受け取れるようになった。
この取り組みの背景には深刻な課題がある。国勢調査では国民の46%が「次の食事をどこから得るか不安だ」と回答しており、2011年以降に人口の5人に1人が国外へ移住している。財務大臣のデビッド・ポール氏は「UBIは人々への投資だ。若者が国を離れず、ここで暮らし続けられる理由になってほしい」と話す。
世界の研究者や政策立案者たちが今、マーシャル諸島の実験に注目している。AIによる仕事の変化など、経済的な不安が広がる時代に、すべての人に最低限の安心を届けるこの試みは、未来の社会保障のあり方を問いかけている。


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